冠を持つ神の手

冠を持つ神の手(二次創作コーナー)

ストーリー

登場人物

一押しシナリオ

攻略のヒント

ゲーム体験談

作者インタビュー

応援サイトに参加する

冠を持つ神の手 二次創作

追加シナリオ

小説

イラスト

お勧めサイト

作品を投稿する

シナリオ創作キット

シナリオの読み方

ユリリエを中心とした二次創作の小説「舞踏会は終わらない6」

ノベル特集

小説

MAIN CAST&SITUATOPN
ユリリエ / 憎悪Bにて、ユリリエに憧れつつ嫉妬した主人公が彼女と闘うお話

舞踏会は終わらない6

舞踏会が始まり、私が最初にしなければならないことは、ヴァイルをダンスに誘うことだ。
「えぇっ、レハトと踊るの?なんか今さら恥ずかしいんだけど。」
あまり乗り気ではない様子のヴァイルだったが、今まで一度も踊ったことはないのだし、一度くらいいいだろうとすがる。それに私と踊っておけば、王配狙いの付きまといたちを牽制できると付け加える。
王になってからますます貴族の少女たちに付きまとわれることが多くなったようで、ヴァイルは疑うような表情をしながらもその言葉に心を動かしたようだ。
「本当かなぁ。余計にうるさく言われる気もするけど。まぁ一度くらいならいいか。いこっか。」
ヴァイルは私の手をとり、広間の中央までエスコートしてくれる。
私たちが広間の中央に陣取ると、周りにいた貴族達は一斉にこちらに注目し、他に誰も踊ろうとするものはいなくなる。
「舞踏会は始まったはずだぞ、演奏を始めよ。」
ヴァイルが演奏隊に声を掛けると、慌てて演奏を始め、私とヴァイルだけのダンスが始まる。
ヴァイルとのダンスはまるで友達同士がふざけあっているような無骨なものだった。
遠目からみても、お世辞にもロマンティックには見えないだろう。
けれど、私は楽しかった。
本当は広間にいる人々に、私が優雅に美しく舞うところを見てほしかったのだが、ヴァイルとのダンスは、お互いに定石の動きを脱してフェイントの掛け合いのようなことをし、まるで剣の試合をしているようなものだった。
人の目を気にしなければならないはずの私は、すっかりそんな事を忘れて、純粋にこのふざけあいを楽しんでいた。
曲調が変わり、ゆったりした音楽に変わった時、私たちは体を近付けてようやくまともに踊り始める。
「あぁ楽しかった。貴族のやつら、俺たちのダンス見て呆然としてたよ、顔見た?」ヴァイルは私の耳元で笑いながら囁く。私も、微笑みながら、彼らの反応がおもしろかったと答える。

貴族達の中にいてもヴァイルと話す時だけは、変に気取らずにいることができる。
故郷の村から連れられてすぐの時も、ヴァイルは私を一度も馬鹿にしたことがなく、対等な友人として接してくれていた。
けれど、これからは王と貴族という立場なので、以前のように気易く付き合い続けるのは難しくなるかもしれないと、私たちはお互いにわかっていた。だからあのようなふざけたダンスをしたのだ。それは二人の間にある友情が、今後変わっていくだろうことを名残惜しむようなものなのだと、私にはわかっていた。

そう思うと、少し寂しく感じたが、気を取り直してダンスに集中する。
「聞いたよ、レハト。ユリリエに宣戦布告したんだって?うわぁ、なんかすごくドロドロしそう。まぁ、はたから見てる分にはおもしろそうだから黙って見てるけど。あんたってホント何考えてるのかわかんないよな。」ヴァイルは踊りながらも楽しそうに囁く。私はなんとなく、王の耳は神の耳といっていたリリアノの言葉を思い出す。
「俺をダンスに誘ったのも、貴族同士の駆け引きとかそういうことなんでしょ?すっかりホントの貴族みたいだよなぁ。」呆れた様子でヴァイルが言う。
私はヴァイルに、王様が退屈しないよう頑張って彼女と張りあうから楽しんで見ててくれと、おどけた様子で答える。
「まぁ、一応いっとくけど、なんかあっても、俺、レハトの肩ばかり持てないからね。ユリリエともそれなりに長い付き合いだし、立場とかあるし。」少し神妙な様子でヴァイルはいう。
大丈夫、彼女も私も貴族の争いという範疇を超えてまで争うつもりはないから、と私はヴァイルに答える。そういってから、私はヴァイルから離れ、恭しく一礼をして見せる。
ヴァイルはそんな私の姿を見て、少し寂しそうに微笑みながら言う。
「レハト殿、お相手頂き感謝する。余は疲れたゆえ少し休ませてもらうが、レハト殿は今宵の舞踏会存分に楽しむといい。」ヴァイルはわざと他の人々に聞こえるよう大きな声でそういい、踵を返して颯爽と広間の中央から離れていく。
これから私は貴族として完璧に振る舞わなくてはいけない。私の一礼を見て、ヴァイルもそれを感じ取ったのか、威厳を保ちながら王として完璧に振る舞い去っていった。
ヴァイルとの友人としての時間は、ひととき私の心を温かくしてくれた。
けれど、私は貴族で、ヴァイルは王なのだ。これからの二人の事を考えると、感傷的になりそうだったが、私にはやらなければならないことがある。
感傷に浸っている暇はないのだ。私は気を引き締めなおした。


子供としての最後の日、私は衣装部屋に向かっていた。
彼女がいるとしたらそこだろうとわかっていたからだ。衣装部屋に向かいながら、私はこれから彼女に投げかける言葉を考えていた。

衣裳部屋には予想通り、彼女の姿があった。
「あら、レハト様。明日の衣装の最終点検にでもいらっしゃったのかしら。成人の儀は密やかな儀といえども大きな節目、せっかくなら自分の納得のいく装いで挑みたいですわよね。」
彼女は、私の憎悪などまるで知らず、にこやかに話しかけてきた。
「宜しかったら少しお散歩しませんか?色々と話したいことがありますの。もちろん、レハト様が貴重なお時間を私なぞにいただけるのでしたら、ね。」
断る理由はなかった。私は彼女と共に、中庭の散歩道を歩く。
日差しは温かく、心地の良い日和だ。
「いよいよ明日で子供の時も終わりですね。いかがですか、最後の日は。貴方がここに来てくれて、とても良かったと心から思っておりますのよ、私。きっと貴方はこの場所を面白くしてくれる。今以上にね。レハト様はどうかしら?私との邂逅が、少しでも貴方の楽しみとなっていれば宜しいのですけれど。」
今さら、そんな風に良い話にまとめようとしてくる彼女が許せなかった。
彼女との邂逅は、私に楽しみではなくたぎるような憎しみをもたらしたのだから。
それにまったく気づいていない彼女が一層憎く思えた。
その気持ちはもはや抑えようもなく、一気に胸から口へと溢れ出てきて、気がつけば私は彼女を罵っていた。
今まで私の事を馬鹿にしてきたこと、
田舎者の私に貴族としての憐みを上の目線からかけていたその態度、
私に近づいてきたのは全て貴族としての戦略に過ぎないと私が気づいているということ、
そのくせ自分だけは他の貴族とは違うというように振る舞うこと。

非難された彼女は眉をひそめてこちらを見やる。
「まあ、レハト様ったら。これは随分と辛辣なお言葉をいただいてしまいましたわね。いつか言ってやろうと、心の中で温めていたのかしら。執拗なこと。ふふ、なるほどね。これは宣戦布告という訳ね。そういうのも確かに面白い趣向ね。貴方がそこまで私を疎んでいたとは思いませんでしたけれど。私は貴方のことは好意的に思っておりましたのにね。いいですわ、その挑戦、お受けいたしましょう。貴方は思うままに私を貶めなさると良いでしょう。私は貴方のやり口を予想し、それを防いでみせますから。ふふふ、貴方が篭りから出てくるのが待ち遠しいこと。確かに貴方は私にこの上なき娯楽を与えてくれるようだわ。神に感謝いたしますわ。貴方という存在を与えてくださったことに。」

私は、不思議にも、彼女のその言葉を頼もしく感じていた。
やはり彼女は完璧な存在だ。私の言葉を否定もせず、感情的になることもなく真っ向から受け止めてみせた。彼女の器の大きさに私は敬意すら覚えていた。
私は感動していた。
これこそ私が思い描いていた理想の貴族の姿だ。
彼女こそまさに私の理想の貴族の姿そのものだ。
その美しさも、聡明さも、華やかさも、器の大きさも、胸の内にある悪意も。

そして私は気付いた。
彼女は待っていたのだ。自分と対等な存在を。
彼女と同じ、完璧な貴族を、彼女はきっと待っていたのだ。

そして彼女は、私を選んだ。
私こそが、彼女と対等になれる存在だと、彼女は認めたのだ。

私はこの城に来てから初めて、心の底から貴族の一員として認められたと感じた。
一点の疑いもなく、私は貴族になれるのだと確信を持つことができた。
憎みながらも憧れつづけていた彼女から認められたのだ。
私は今までに感じたことがない位、大きな喜びを感じていた。

私は自然と笑みがこぼれ、今まで彼女に向けたどれよりも完璧な笑顔を彼女に向けた後、中庭を立ち去ったのだった。

それからすぐに私は篭りに入った。少なくとも私の部屋の中では、篭りの間は穏やかに過ぎて行った。
けれど、外の世界は忙しなく動いている事は知っていた。
何しろ譲位の年なのだ。色々な思惑が入り混じっていることだろう。
外の様子を探ろうにも、彼女を貶めるための準備を進めようにも、外部から遮断されている篭りの間は、おとなしくしているしかなかった。
彼女は今が機と、報復のために色々暗躍していることだろう。
この部屋から出た時、私を取り巻く状況はかなり不利になっていると見ていい。
しかし、私が準備したことも進んでいることだろう。
篭りの間、私はこれからの彼女との闘いの事だけを考え続けていた。

篭りが明けてから継承の儀の間までは、儀式の手順などを覚えるので忙しかった。
しかし、そのことだけに集中するわけにはいかなかった。この期間私は、主に彼女が私を追い詰めるためにどんな手を使ったのかを調べることに費やした。その頃から、私の部屋に貴族達がご機嫌伺いにくる機会が増えたので、さりげなく彼らから情報を引き出そうと試みていた。
けれど、私の部屋に来た貴族達からは彼女の最近の情報はあまり得られなかった。
彼らが言うには、どうも彼女は忙しく飛び回っている様子だったが、具体的にどんなことをしているのか、知っているものはいないようだったのだ。

上手く彼女の動きをつかめないながらも、私の元に訪れる人たちには愛想よく丁寧に対応するように心がけていた。上級貴族たちだけでなく、中級下級の貴族や文官など、私の元に訪れる意思を持つ人たちには、できるだけ多く接触していた。
そして、私は彼らの顔ぶれを見てあることに気がついたのだった。
私の元に来る人たちに共通点は見いだせなかったが、私の元に来ない人たちにはある共通点があった。
それに気が付いた時、私は彼女が何をしようとしているのか理解した。

彼女の企みに気がついた時、私は背筋が凍りついた。
いきなり彼女は私の喉元に刃を突き付けようとしていたからだ。
彼女の企みが上手くいけば、私は命を落とすことになるだろう。彼女に宣戦布告をしてから最初の攻撃が、まさかここまで過激なものだとは思いもよらなかった。

私の元に訪れなかった人たちは、いわゆるランテ派と言われる派閥の貴族たちだ。
リリアノの王政の元、国政に携わる主要な役職を務めていて、リリアノの王政を支える力となっている者たちだ。
王に近い位置にいる者達なので、その分国政に関する大きな権限とそれに見合う富を持っている。彼らの思惑としては、現在の体制が続くことを心より願っていることだろう。
リリアノの甥のヴァイルが王位につけば、自然とその体制が継続されるはずなので、当然ヴァイルの王位継承は好ましいことだ。ヴァイルの王位継承が決まって、彼らも心底ほっとしていることだろう。
けれど、彼らが一人も私の元に来ないのは何故だろうか。
ランテ派の貴族達の中にも、私と年齢の近い男性の子息を持つものたちも多い。
私を子息の配偶にし、自分の家系から印持ちを輩出しようと考える貴族は多いはずだ。貴族として王の親戚になることは最大の繁栄につながることなのに、その可能性が高くなりそうな私の元に、何故そろって彼らは来ないのか。
彼らにとって一番狙いたい相手は当然、王のヴァイルだが、それでも印が血筋によって輩出される可能性が高くなることをランテが証明しているのだから、一人くらいは私の元に訪れてもいいようなものなのに、ランテ派はそろって顔を出さない。
そのことを考えて、私は気付いたのだった。

彼女が企んでいる筋書き、それは恐らく謀反だ。
王を蹴落とし、王になる野心を私が持っていると、恐らくランテ派の貴族達に吹聴しているのだ。
もし私が反逆罪に問われたら、助かる道はない。
私の最大の武器であると同時に、私の最大の弱点が、額の徴なのだから。

継承の儀において継承権を放棄するまでは、私にも王の継承権があることになる。
篭りがあけてから継承の儀を執り行う期間を狙って私が反ランテの勢力と結びつき、自分が王位の正当な後継者だと名乗りを上げて反乱軍を組織し、王位を奪還する意図がある、というような筋書きをもしユリリエがでっちあげていたなら、ランテ派の貴族達全員が私を敵視し、警戒するだろう。
今まで、王にならなかった印を持つ継承者はいないのだから、少なからずこの話には信憑性がある。
加えて私は、私の元に訪れるかなりの数の人たちと接触をしてきた。その中には、現在の体制に不満を持つ貴族も多い。爵位の割に、与えられている領地や権限が少ない貴族達や、譲位の年の混乱に乗じてのし上がろうとする貴族達もいる。そのような勢力と私が接触を持っているとランテ派が勘ぐったなら、私に謀反の疑いがあると考え、私に死を与えるようヴァイルに上訴する可能性は十分にある。
ランテ派は足並みを揃えて私の元に訪れないのだから、もしかすると彼らは一致団結し、私を陥れるもっと巧妙で卑劣な計画を、すでに立てているのかもしれない。

私の反逆心をヴァイルに上訴するためには、当然、私が反逆の意図を持っている証拠が必要だろう。しかし、彼らがその気になれば、そんなものはいくらでもでっち上げられる。

例えば、私を拉致し城より失踪させて監禁する。
その間にどこかの地方で偽りの反乱を起こす。
ランテ派がこの反乱を鎮めた後、反乱の首謀者が私だったとして連行してしまえば、事実などともかく、私の死を訴える大義名分がすっかり出来上がる。
もしくは、王になる意思があるので力を貸してほしいという手紙を、私の筆跡をまねてねつ造し、反体制派の貴族宛に送ったとでっちあげれば、もっと簡単にいくのかもしれない。

もちろん私に王になる意思などないし、王位を奪還する計画など全く考えていない。けれど、ランテ派が疑心暗鬼に陥り、私の事を、今の体制を壊そうとする反逆者として認識しているなら、私が何を言っても、彼らの心には届かないだろう。
彼らに会って自分の意思を伝えたとしても無駄な努力だ。
私の額の徴は、王になる資格を示すものなのだから、彼らが一度でも疑心暗鬼に陥ってしまえば、王になる可能性のある邪魔者は、早く消してしまおうと躍起になるだろう。

もし、本当に、そのような計画を彼らが企てていたなら、私はとてつもなく危機的な立場に追いやられてしまう。私には彼らの真意を調べる必要があった。

私はローニカを呼び、調べ物をしてほしいと告げた。
「レハト様、この爺めに何を調べてほしいのでしょうか。なんなりとお申し付けください。」
ローニカは穏やかな微笑みを浮かべながらこたえた。ランテ派の動向だ、と私が答えると、ローニカは少し渋い表情をした。
「つまり、私に裏の仕事をしろとおっしゃるのですね。」
そうだ、と私は答え、自分の推論をローニカに話した。
ローニカがただの侍従ではなく、王の身を護ったり、裏の情報を集めたり、時には邪魔なものを暗殺したりするような影の任務を担う役目であることを私は知っていた。
ローニカは私の推論を聞くと、戸惑った様子だった。
「詳しいことは存じ上げませんが、それはレハト様のお考えが過ぎるのではありませんか?彼らがそこまでの事を企てるほど、追い詰められているとは思えませんし・・。ですが、念のため、彼らに探りを入れておきます。レハト様は安心して継承の儀までの時間をお過ごしください。」
恭しく一礼をして、ローニカは去って行った。

それから私は、別の侍従を呼んで、体調が優れないので休むと告げた。今日私の元を訪れる予定だった者達に、その旨を告げ、面会の予定を中止してくれと命じ、ローニカの調査が終わるのを待ったのだった。
ローニカの調査が終わるまで、私は数日の間、病に伏せっている振りをし、面会の予定を全て断り、部屋に閉じこもることにした。病の診断をローニカと同じ種類の役目を持つ医士にさせ、私が絶対安静の病にかかっていると皆に報告するよう、ローニカに取り計らってもらった。もし、私の推論が正しければ、今、私が色々な思惑を持つ者達に会うのは危険だと判断したからだった。

そうして過ごした数日の後、ローニカが調査の結果を告げた。
「調査してみて、レハト様がお考えの通り、彼らが何かを企てていると判明いたしました。詳しいことまではまだはっきりしないのですが、どうもレハト様を陥れようとするものであることは間違いないようです。しかし、まさかこのようなことが起こるとはゆめゆめ思ってもおりませんでした。」暗い表情で、ローニカは私に報告をした。
ローニカの報告を聞き、私はため息をついた。篭りを終えてすぐに、このような危機を迎えるとは前途多難だと思った。
彼女と闘うということは、こういうことなのかと、私は改めて思ったのだった。

ローニカがこの件を私に報告したということは、既にリリアノもこの件を知っているということだ。リリアノがこの件を知れば、当然何らかの形で対応してくれるだろう。まさかリリアノやヴァイルまでがランテ派の流れにしたがって私を追い詰めることはありえない。
私ができることは、彼らに付け入る隙を与えることなく、継承の儀までの時間を注意深く過ごすことだけだ。
私は、変わらず病に伏せっている事にしておき、継承の儀までの時を、誰にも会わず静かに過ごすことにしたのだった

それにしても、と私は考えていた。
それにしても、彼女はどのようにやりとげたのだろうか。
事の全幕はわからないので、推測の域を出ないが、今回の事は、ランテ派の貴族達が主体的に計画したことだと推測できる。
ランテ派全ての貴族が足並みを揃え、私の追放を計画していた。一介の伯爵の子息令嬢である彼女がそのような求心力を持つわけがない。

では、彼女はどうやったのか。
恐らく、彼女は言葉を操っただけだろう。
言葉を操り、ランテ派の貴族達が持つ危機感を煽っただけなのだろう。彼らが心の内に持つ野心と打算を計算し、私という存在に対する密かで小さな危機感を、この上なく大きく増長させたのだ。
人心操作こそが貴族の最大の武器だと誰かが言っていた。
彼女はその人心操作の手本を私に見せてくれた。彼女は言葉だけで、ランテ派の貴族達を見事に操ったのだ。
ローニカが言っていた通り、彼らはそこまで追い詰められているわけではなかった。団結して私を殺そうとしなければならないほど、困難な状況にあるわけではなかった。彼らの望み通り、ヴァイルは王に選ばれたのだし、普通に考えれば、何もしなくても彼らはそのままの地位を維持したままでいられるだろう。
それでもこのような計画を立てなければならないほど、彼らは追い詰められていたのだ。
彼女から巧みに語られた言葉は、彼らをそこまで追い詰めたのだ。
さすが彼女だ。敵ながら見事なものだと、私は自分が陥れられたことに憤りを感じながらも、心のどこかで感心していたのだった。

AUTHOR / 作者 joeさん

その6