冠を持つ神の手

冠を持つ神の手(二次創作コーナー)

ストーリー

登場人物

一押しシナリオ

攻略のヒント

ゲーム体験談

作者インタビュー

応援サイトに参加する

冠を持つ神の手 二次創作

追加シナリオ

小説

イラスト

お勧めサイト

作品を投稿する

シナリオ創作キット

シナリオの読み方

ユリリエを中心とした二次創作の小説「舞踏会は終わらない7」

ノベル特集

小説

MAIN CAST&SITUATOPN
ユリリエ / 憎悪Bにて、ユリリエに憧れつつ嫉妬した主人公が彼女と闘うお話

舞踏会は終わらない7

ヴァイルとの二人だけのダンスを終えた後、私のまわりを多くの人々が取り囲む。
ヴァイルはさっさと立ち去ってしまったので、必然的に残った私に人々が集中して集まってくるのだ。
ヴァイルと親しげに踊ったことで、この会場にいる人たちに私とヴァイルの親密さをアピールできた。その上、私には王より下賜された紅玉まである。ヴァイルが私に特別な信頼を寄せていると、疑う者はいないだろう。

ランテ派の計画はリリアノによって防がれたとローニカに聞いていた。このことをヴァイルが知ればランテ派の貴族達の命はないだろうと、リリアノはランテ派の貴族達を脅したそうだ。これから彼らが、再び変な気を起こさないためにも、私はヴァイルから特別な寵愛を受けているものとして振る舞い、リリアノの言葉の裏付けをしなければならなかった。私に手を出せば、ヴァイルが黙っていないだろうと、彼らに見せつけなければならなかったのだ。
今日のこの様子だと、その思惑は十分に果たせたと思う。
もしかしたら、私とヴァイルが恋仲にあるのではないかと勘繰るものもいるかもしれない。
実際にはお互いそんなつもりはないのだが、そのように勘繰られるのは私には都合の悪いことはない。
王を狙っていると噂されるよりも、王配を狙っていると噂される方が、はるかに安全だ。年頃の者が一族にいるほとんど全ての貴族が王配に興味を示しているだろうから、嫉妬されることはあっても、立場としては他の貴族達と大差ない。
今日しなければならないことのうち、一つはやり遂げることができたのだと、私は密かに安堵したのだった。

私を取り囲む人々は、私の美しさを称賛するものや、紅玉をよく見せてくれというもの、王との仲を詳しく聞き出そうとするものなど様々だ。
だが、取り囲んでいる人々の様子からは悪意は感じられない。私のことを好意的にとらえている者達ばかりだと感じる。
私は取り囲んでいる人の中に、ランテ派の貴族の一人である某侯爵の子息を見つけた。
私の元にご機嫌伺いに来なかったものなので、ランテ派が企てた事を知っているのか、それとも父親の侯爵から私のところに訪れることを禁止されていただけなのかわからないが、少なくとも表面上、悪意は感じられない。彼は私と踊りたいと申し出ているので、私は受け入れることにする。

私が相手を定め踊り始めようとすると、取り囲んでいた人たちは少し離れ始めた。
私たちが踊りだすと、周りの人々も次々に踊り始めるので、私の周りに集まった人だかりもなくなり、普段通りの舞踏会の様子に落ち着いたようだった。

私は踊りながらも、時折相手に微笑んで見せた。私と目が合うと彼は照れたようにうつむいてしまう。確か年齢は私の一つ上で三兄弟の末っ子だったと、彼女が、この家の家族構成について私に話してくれたことを思い出した。二人以上子息がいる家では、王がどちらの性別を選ぶかわからないので、王配の可能性を広げるために、兄弟で男女違う性別を選ぶのが貴族間の常識となっている。彼の家では、一番上の兄が男性、二番目の兄が女性を選んでいたはずだ。リリアノの息子でヴァイルの従兄弟にあたるタナッセが男性を選んだので、もしかしたらヴァイルが女性を選び婚姻するのではないかと勘繰る貴族も多かったらしい。ヴァイルは男性になることを公言していたものの、念のために子息に男性を選ばせる貴族達も少なくなかった。

男性を選んだ子息を持つ貴族たちにとって、私は格好の標的の一人と言えるだろう。ヴァイルは男性を選んだのだから、男性貴族が印を狙うには私しかいない。もちろん印だけではなく、爵位や家柄なども考慮にいれなければならないと思うが、私の場合、爵位はそこそこだが、現在の王とそれなりの信頼関係を築いていると言っていい。立場としては、貴族の未婚女性の中でも客観的に見て良い条件と言える。
印と私の立場両方を考えれば、私の存在は貴族たちにとってかなり魅力的なはずだ。
私を警戒しているランテ派の貴族達も、そのうちに敵対するより、私を手に入れる事を考えた方がいいと自然に気付くことになるだろう。
私が彼と踊ろうと思ったのも、そのことを彼らに自覚させるためだった。私は配偶の相手としてランテ派の貴族達も候補から除外はしていないとの意思を示すためだった。恐らく彼らのうちの一人でも私を手に入れようと動き始めたら、そのあとはなし崩しに次々と私に言い寄る者が増えるだろう。

目の前の彼は初心な性質らしく、赤くなって私と目をあわそうとしないし、私を意識しているせいかダンスもどことなくぎこちない。それを見て私はどんどん余裕が生まれ、自然と微笑みがこぼれる。

そこで私はわざと足がもつれた振りをし、彼に思い切りもたれかかる。
彼の腕の中に抱きすくめられた私は、彼と同じように初心で純粋な人物の仮面をつけることにする。あえて彼に目を合わさず、伏し目がちに照れたように微笑み、まだ新しい靴になれていなくてバランスを崩してしまい申し訳ないという旨の事を、この上なく愛らしい声色でささやく。
疲れたので少し休むと彼に言い、私は照れて恥じらう少女の振りをしながらその場を立ち去る。去り際に少し振り返り、彼に思わせぶりな視線を残し、足早にその場を離れる。
彼は顔を真っ赤にしながら呆けた表情で私を見て、立ち尽くしている。

上手くいったのではないだろうか。
あの様子では、近いうちに私の元を訪れてくるだろう。彼と婚姻する気はないが、彼の存在は、他のランテ派の貴族達が私を手に入れようとする争奪戦の呼び水になってくれるはずだ。

舞踏会の序盤は全て私の思惑通りに事が運んだ。
今日、ここまでの事を振り返りながら、私は考える。
彼女は、私をどう評価するだろうか。
私は彼女の企みを完全に防いだと言えるはずだ。
その上、新たな王から格別な扱いを受けている事を皆に示すことができた。
自分では上出来だと思うが、彼女が私をどう評価するか、素直に聞いてみたい衝動にかられていた。
彼女は私の師で、目標なのだ。たとえ憎しみ合っていたとしても、私は彼女を目指し続けるし、彼女という存在を超えてみたい。

そろそろ彼女と直接顔を合わせなければいけない。
私はこれから訪れる彼女との対面を、不安と期待の両方を抱えながら考えているのだった。

AUTHOR / 作者 joeさん

その7