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タナッセを中心とした二次創作の小説「夢とかぜ②」

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タナッセ / 愛情Bルートお引越し前

夢とかぜ②

 「熱があるな。氷を用意しようか」
 「あ、ううん、大丈夫。冷えすぎちゃうから」
 「それなら何か食べたい物はないか」
 「寝る前に食べたばかりで…」
 「そうか」

 自分だって毛布にくるまっているくせに、かいがいしく世話を焼こうとするタナッセがおかしくて、ついクスクスと笑ってしまう。
 同時に、何回か続けて咳が出る。息苦しさに体を起こすと、手元にグラスが差し出された。
 「飲め」
 素直に受け取り、水をちびちびとすすっている間、慣れない手つきで背中をさすってくれる。おかげで、少しづつ息が整ってきた。

 脇の机にグラスを置こうとしているタナッセの腕は白く華奢で、柔らかそうに見える。でも指の節なんかは太くて固そうだ。私に向けている背中にも、筋肉の微かな隆起が肌着越しに見て取れて…自然と触りたくなった。
 よしよし、と先程彼がしてくれたように背中を撫でてみる。撫でるふりをして背骨のかたちを指先で確かめる。

 「…どうした」
 くすぐったそうに肩をすくめながら、タナッセがこちらを向いた。
 「ん。タナッセの背中は、広いね。広くて、かたちがいいね」
 「は。そうか?自分では、そうは思わん。…貧相だろうが」
 私のこんな他愛もないほめ言葉に対してでさえ不満そう。目をそらし鼻をフンと鳴らして、何をごまかそうとしているのか自分の背中をポリポリと掻き始めたりして。

 その反応はまさしく予想通りだったのだけれど、彼の方は、分かっているのだろうか。そういった態度がますます私の気持ちを煽る事を。
 何より彼は今、自から進んで私の領域、でなくてベッドの上にいるわけで。そして私は微熱の為すこし頭がぼおっとしていて『調子がいい』。

 ベッドに手をついて、タナッセの方に身を乗り出す。水か?と机に伸ばされかけた大きな手を、ぎゅっと掴んで、毛布の上から私の膝に乗せた。
 なんだ、氷か?って私の額に触れようとするもう片方も捕まえて、こちらに引き寄せる。心配そうな顔をしているタナッセに向かって口を開く。
 「きれいなかたちで、気持ちのいい背骨だよ」
 「は?…背骨がどうしたんだ」
 「それに指のかたちもきれい。…このペンダコだって、こうやってなぞってたら、癖になりそう」
 「おい、やめろ。こそばゆいぞ。いや、何を言ってるんだ。お前は」
 「髪の色もきれい。夢に見るくらい好きな色。それから…」

 タナッセの両手を握ったまま、彼の返答は無視して、思いつくまま並べ立てる。眠っている女のベッドに無断でもぐり込むことは平気でするくせに、なんやかんやと身体に触れるのも始めから戸惑いなくしてきたくせに。
 それなのに何故、こんな嘘っぽい台詞の羅列だけで、そんな表情を見せてくれるんだろう。かいがいしく私を世話しようとする、私のベッドの上に座った、無防備な服装の、真っ赤な頬をしたタナッセ。彼が言うまで続けよう、

 「うるさい、だまれ」
 …言われてしまった。想像していたのよりもずっと穏やかな声色で。冷たい指先で、私の唇をそっと押さえながら。
 「なんなんだ…。本当にお前のは風邪からくる熱なのか。幼児が起こす知恵熱の類ではないのか。変な物でも見たか」
 タナッセは私から身体を離すとその場で胡坐を掻き、俯き加減でぶつぶつと呟き始めた。なにが気持ちのいい背骨だ、意味がわからん、と。赤い頬のままで。

 私も彼の隣で所在無く膝を抱え、視線を伏せた。そしてぽつりと言う。
 「変な物なら見た…」
 「何をだ。恐ろしい夢か何かか」
 「タナッセ…」
 「なんだ?」
 「違う。タナッセを見た。起きたら急に目の前にいて。人の身体をべたべた触って…」
 タナッセが胡坐に頬杖をついたまま、すごい勢いで私の方に顔を向けた。
 「な…どういうことだ、まさか痴漢扱いする気ではないだろうな。い、今までだって散々、その、変な言い方だが、触れ合ってきだろうが」

 手を握ったり、口付けをしたり、したぞ?お前からもしてきたはずだ、そうだな?それともなんだ今更になって実は嫌だったとでも言うつもりか―――そんなつもりは一切無いのだけれど、慌てたように早口で喋るタナッセが可愛いので、どんなに膝立ちで詰め寄って四方から顔を覗き込んできても、絶対に目は合わせてやらない。

 というか今目を合わせたら…抱きついてしまいそうで、だめだ、私が。動き回るタナッセの顔を見ないように、ぐい、と彼の顎を押しのけた。
 「そうじゃなくて。そういうのはいっぱいしてきたし。もちろんイヤなわけない。でも今日は、なんか勝手に人のベッドに寝てて。からだ密着してて。すごい優しく背中撫でてくれて、おまけにタナッセは寝巻きよりも薄着でさ、肌が、いっぱい見えて、背中のかたちとかも…」
 「興奮、したのか」
 相変わらず嫌な表現の仕方をする。でも、的確だ。私は素直に頷いて、タナッセと目を合わせる。顔が近かったのでそのまま口付けた。ちゅ、と軽い音がする。

 「…すまなかったな、誘惑して」
 「謝るようなことじゃないと思うんだけど」
 「お前は…私に、どうしてほしい?」
 今度はタナッセの方が私と視線を合わせようとしない。心なしか潤んだ目を伏せて、もじもじと私の両手を弄んでいる。何を期待しているかはあきらかで、私も実際望んではいるのだけれど、彼のしおらしい態度をもうしばらく堪能したいという欲の方が勝ってしまった。

 「ええと。うん、そうだな、なんかまた眠くなってきた。ねぇタナッセ、さっきみたいに添い寝して。また眠るから」
 「え。あ。りょ、了解した」
 快く了承してくれたが、その目には失望の色が浮かんでいる。笑いを押し殺したままタナッセと一緒に横になり、毛布を被った。
 毛布が起こした風で、ふわり、とあの香り。
 「あ、タナッセ、いい匂い」
 「え?」
 「そういえばね、ほんとは夢も見たんだ。悪夢じゃないけど。」
 「どんな」
 「空からも母さんからもタナッセの匂いがする夢」
 「なんだそれは。…私が隣で寝ていたからか」
 タナッセの胸に顔をうずめる。そこからも同じ匂いがした。
 「あれ?頭からってわけじゃないんだ」

 首筋、耳の裏、手首、わき腹。私は犬みたいにタナッセの体中を嗅ぎまわってみる。しだいにタナッセの身体が硬直し、汗ばみはじめた。
 「ちょっと…待ってくれ。私はその、言ってなかったかも知れないが、そういう事を…経験が、全く無くて…質問するが、お前が今しているのは…普通なのか?それとも、一風変わった趣のっ…」
 「うん、全身からする。ねえ、香水?石鹸?」
 私の口から出た単語を聞いて、意味を解したらしい。拗ねたような、低く小さな声で、タナッセは答える。
 「そんなに匂うか…?香水はつけていないし、石鹸は確か、お前が使っているのと同じものだぞ」
 「うそ。すごくにおうよ」
 「悪かったな」
 「違う。すごくいい香り。なんか甘くてね、爽やかでね、ずっと嗅いでいたいような素敵な香りだよ。すごくいい、大好きな匂い…」

 そして、暖かい。
 全身を包みこむように抱きしめられている。
 何も恐れる事などないような、幸福感、万能感。




 頭がぼおっとする。
 私はうず高く詰まれた藁の上に座って足をぶらぶらさせている。
 母さん、なかなか迎えに来ない。
 でももうすぐやってくる。
 ほら、母さんの匂い。
 藁の上から振り返る。私よりひとつふたつ年上に見える子供が、私を見上げて立っていた。大人しそうな顔してるのに、私と目が合うと、急に意地悪な目つきになって、こう言った。
 『やい降りろ。そこに座るのはぼくだぞ。』
 大きな声で、えばってるのに、なんだかへっぴり腰で、弱そうだ。

 『だーめだよ、この藁の上が目印なの。ここに座ってれば、お迎えくるんだもん。』
 『お迎えなんか来ないよ。ばっかだなあ。』
 あんまり意地悪を言うもんだから、私は腹が立って、その子に藁の束を投げつけた。藁をぶつけられたぐらいで転ぶへっぴり腰。
 お前なんかこうだ!って叫んで、敵は小さな石ころを投げつけてきた。

 もう我慢できるもんか。
 私は藁の山から滑りおりて、意地悪坊主に殴りかかった。
 そしたら相手は青い顔して怖がったけど、私の蹴りが脛に当たったらまた怒り出して、あとは掴み合いの取っ組み合い。
 でもやっぱり身体の大きな年上には勝てなくて、私はひいひい泣き出した。
 そしたら相手もつられて泣き出して。
 私の方が血もいっぱい出てて痛いのに、泣かないでって慰めて、泣き止まないから頭を撫でた。頭を撫でたら抱きしめられた。
 抱きしめ返せば走って逃げるのに、立ち止まったら口を吸われた。

 『あらあら、何かしら、泥だらけになって』
 藁の山の前たたずむ私たちを、ようやっと見つけてくれた母さん。
 母さんは私と坊主の額に手を当てて言った、
 『ふたりともお熱があるみたいね』
 私たちふたりの手を引いて、おうちに向かって歩き出す。
 私はまだ泣き止まないその子に言った、
 『一緒においで。ずうっと一緒においでよ』
 彼の手を引いて連れて行く。


 不思議な夢から覚めた時、タナッセの体はすっかり熱かった。

AUTHOR / 作者 うにグラノラさん

完結です。
①と②のボリューム比重がおかしいですね。
もちろん無計画です!

タナッセ好きによる少女小説?でございます。

かもかてにハマりすぎて人生変わりそうです、
皆様もお気をつけて…。

ありがとうございました!